2003.6.8更新

CGシリコン液晶の美しさにクラクラ〜 「SL-C700」

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■ PDAにもとめるもの

 みなさんは、PDAに何をもとめますか? 開いてすぐ必要な機能を使える敏捷性ですか? バッテリの持ちですか? 軽さと小ささですか? それとも、パソコンの代わりとして使えるスペックと機能ですか?

 私も人並みにはPDAを使ってきましたけど、少なくとも最後の答え、つまり『パソコンの代わりとして使える』という答えだけは選ばなかったことと思います。…これまでは。

 だから、辰巳琢郎氏が出演してた、かつてのZaurusのCM(「仕事にZaurusひとつ。あとはいらん」でしたっけ?)も相当にウソくさいっていうか、世の営業の人ってそんなにお気楽な仕事してるんかい、と方向チガイなツッコミを入れたもんでした。

 しかし、時は流れて。

 Zaurusに、それまでのクローズドな独自OSに置き換わって、Linuxが搭載されるようになりました。それだけでも「おっ」と思わせる何かがあったのですが、第2世代機のひとつ「SL-C700」ではなんと、3.7インチのVGA表示可能な液晶を搭載。幅わずか12cmの筐体に、640×480の画面が乗っかるというアクロバティックな技を成し遂げたわけです。

 発表された当初は別になんとも思っていなかった私ですけど、いくつかインプレッション記事をみていくうちに、“もしかして、これはイケルかも”と思い始めました。本サイトの更新作業は、いまやニュースのピックアップがメインです。出張時など遠出をする際には愛機Mebius MURAMASA(PC-MT1-H3)の出動となるわけですが、ノートPCが昔に比べ軽くなったとはいえ、それだけで1.3kg超のものを持ち歩くのは、状況によってはかなりの負担です。だから、もしPDAのサイズでWebブラウズが快適にできて、なおかつ文章入力がそこそこできるマシンがあれば、こんなに理想的な解はないのです。そう、まさに『パソコンの代わりとして使える』ことを期待したというわけです。

 そこでさっそく、ネット通販で注文♪ 発売日約10日前のオーダーで、注文殺到状況は知っていたため「かなり遅れるかな」と心配したのですが、発売日翌週の週末には配送されました。購入価格は税抜き52,800円でした。


■ 最強のモバイルWebブラウザ端末?

 まず驚いたのが、なんといっても液晶画面の美しさ。この薄さ・この軽さで、この解像度は、CGシリコン液晶の恩恵を最大限に引き出してますね。定評のあるシャープの液晶ということもありますけど、文字の見やすさという点では独自開発のLCフォントの効果も大でしょう。普通、物理的な画面サイズだけ小さくして解像度がそのままだと字がつぶれて見づらくなるものですが、このSL-C700の液晶に限っては、約1mm角の漢字であっても十分視認できます。また、液晶は透過型ですが、バックライトのおかげで屋外でも十分使用できます。

 その液晶の能力のおかげもあって、標準搭載のWebブラウザ「NetFront」は十分実用に堪えるデキになってます。メインで使うのがAirH"の128kbps環境なので、通信速度に関してはそもそも期待すべくもないのですが、それでも静止して(移動しないで)使う分には、けっこうそれなりのスピードで表示してくれます。なにより通常のWebサイトで、解像度が低いことによるレイアウト崩れが発生しないのがいいですね。NetFront自体のブラウザとしての素性もいいということなのでしょう。

 ただ、全然問題がないというわけでもないです。解像度が高いということは文字の大きさが相対的に小さくなるということで、文字にリンクが張ってある場合、クリックが難しくなるってことでもあるんですね。これはスタイラスによるタッチパネルだから、という要因もあるかと思うのですが。そのため、一文字にだけリンクが張ってあるような場合には、容易にクリックできずイラつく場合があります。ま、あまりないケースではあるので、実用上大きな問題ということもないんですけどね。


■ 難点はやはりスピードとスタミナ

 今度は逆に、気になる部分をみてみましょう。すでに指摘し尽くされてる感がありますが、この機種の欠点はズバリ、スピードとスタミナです。

 まず、スピード。アプリケーションの起動速度が非常に遅いです。率直に言って、PDAとしての許容範囲を超えていると感じます。アプリのアイコンをクリックして、使えるようになるまで10秒以上待たされることも稀ではないです。ですから、純粋にPIMツールとして期待する向きにはツライでしょう。「パソコンだって、起動に時間のかかるアプリはあるしね〜」と割り切れるようでなければ使えないと思います。

 次に、スタミナ。公式には電池の持ちはそんなに悪くないように言われており、公称使用時間は『連続表示:約4時間50分』なんてことになっています。が、これは“バックライトライト輝度最小でカレンダーのみを連続的に表示させた場合”という、およそ非現実的な状況下での計測のため、実使用時にはなんの参考にもなりません。実使用では、このQ&Aページにも書かれているように、2時間は切ると思っておいた方が間違いないです。

 実際、AirH"カード(AH-N401C)による通信を多用した場合、非連続使用であっても体感的には1時間程度がいいところです。遠出をする際には、かなり厳しい条件ですよね。「バックアップに予備バッテリを持っていけばいいのでは」という意見もあるんでしょうけど、これも散々指摘されてるように電池交換時には再起動を強要される仕様のため、気が進まないというのが本音です。なにより、PDAが予備バッテリの使用を前提としているというのは、いかがなものかと思うのですが。「そこもパソコンと同じなだけ」と言われれば、そうなのかもしれません…。


■ 他にも気になる点といえば…

 これもよく指摘されるのですが、初期状態ではメモリが不足してすぐアラートが出ます。「メモリ不足のため、終了するアプリを選択してください」という主旨のアラートなのですが、驚いたことにNetFrontだけを使っていても出ることがあるんです。「どないせぇっちゅ〜ねん」って感じですね。

 このメモリ不足のアラートは、SDカード上にスワップファイルを置くことで、ほとんど出なくすることが可能です。が、容易に着脱可能なメディアにスワップファイルを作るというのは危険を伴う作業ですから、なにかあった場合に自分で責任をとれるだけの度量が必要です。また、SDカードスロットをほぼ占有される形になるので、記憶メディアとしてCFスロットしか使えなくなるという難点もあります。私の場合、デジカメの記憶媒体がSDカードなので、撮った写真を即キレイでおっきな液晶画面に表示できるということで、SL-C700をフォトビューワとしても使っていたのですが、スワップファイルを置いて以来、ほとんどそういう使い方をしなくなってしまいました。だって、手順を踏んでカードを抜き差しするのって、けっこう面倒なんですもん。

 あと、個人的に不満なのは、クレードルをもたないこと。「ザウルスショット」や「ザウルスドライブ」など、パソコンとの連携による魅力的な機能をウリにしてるわけですから、パソコンとの接続のしやすさを考慮して欲しかったです。電源供給についてもそう。付属のACアダプタはサイズが小さい点はとても気に入ってるのですけど、机の下の電源タップに差して使うと、本体接続側のコネクタが、本体がつながってない状態だとコードの重さで落下してしまいます。基本的に毎日充電、毎日着脱する機器だからこそ、この点はかなり不便です。現在は、ターンクリップ()をテーブルの端にはさむなどというウラワザでしのいでいますが、これもクレードルにしてくれれば一発解消ですよね。


■ 文章入力はできますか?

 購入以前に気になっていた点としては、きちんと文字入力ができるかという点です。以前、これもシャープのTelios HC-AJ1を購入した際に、キーピッチが15mmということで挫折した経験をもつ身としては、それくらいの学習はなされていて当然です。というか、HC-AJ1の場合は、キーボード云々よりもポインティングデバイスの方が致命的だったのですけど。

 打ってみた感じとしては、そんなに悪くないです。そもそも、このキーボードを普通のホームポジションでブラインドタッチしようとする人はあまりいないでしょうから。デフォルトは、両親指のみの打鍵、他の指は筐体を支えるためのサポートという打ち方になるでしょう。最初は戸惑いますが、所詮は慣れの問題と感じます。慣れにくいのは、スタイルの違いよりもむしろ、あまりにも右寄りになってる配置の方でしょうか。記号キーがないため、アルファベット部分が全体にかなり右にシフトしているのです。これは感覚的に馴染みにくい部分でしょうね。

 キーボードの配列に関しては、他にもいくつか不満な点があります。が、キーコンフィグは比較的簡単に変えられますので、ある程度の不満は解消可能です。


■ それでも評価したくなる素性のよさ

 とまぁ、不満をたらたらと挙げてきましたが、では“失格な”機種なのかというと、ぜんぜんそんなことはないんです。実際自分では、かつてのPDAでは考えられなかったほど、きちんと毎日使ってますし。

 それじゃ、“贔屓の引き倒し”じゃないかと怒られるかもしれませんけど、気に入って使ってるんだから仕方がないです。なにがそんなに引きつけるのかと考えてみると、ひとつは高精細で美しい液晶をもっているというポテンシャルの高さであり、ひとつはLinuxを搭載していることによる柔軟性の高さなのではないかと。

 Linux搭載によるメリットについては想像してた以上に大きいと感じました。たとえば、「Ctrlキーがなくて不便」という問題点もキーコンフィグ設定でなんとかなったり、NTPによりネットワーク接続時に自動的に時計合わせができたり…。自分で情報収集ができる人にとっては、自分好みのカスタマイズが比較的容易にできるというオープンソースの恩恵を、うまくプラットフォームに持ち込んだという点は高く評価したいところです。もちろん、有益なツールを無償で公開している開発者に感謝することも忘れてはいけませんが。

 出始めの頃、方々のレビューがほとんど同じ論調で「不満な点はいっぱい、でも、すごく面白い」と述べていることに対する懐疑的な意見をどこかで見かけました。でも、私もたしかにそんな感じにしか表現できないです。バランスも悪いし、完成度も高くない、でも、やっぱり手応えを感じるんです。それはつまり、生まれつきの素性は悪くなくて、また目指すべき方向は間違ってなくて、今後きちんと伸びていけば、きっとすごくイイものに化けるだろうって予感めいたものがある、ということなんじゃないかと思えます。


■ 現状の使いかた

 で結局、当初期待した使い方ができているかということに立ち戻りますが。

 実は、残念ながらパソコンの代わりにはなってくれてないのです。それは前に述べましたけど、ひとつはアプリの起動の遅さ、ひとつはバッテリの持ちに起因しています。

 ニュースの更新って、きっとぜんぜん大したことしてないように見えると思いますけど、実は…ぜんぜん大したことしてません(苦笑)。…じゃなくて(汗)。Webブラウザのウィンドウを何枚も開く必要がありますし、エディタとの間で何度も何度も画面を切り替える必要もあります。書いたページをブラウザに表示して確認する作業も必要です。でき上がったページをアップロードするためにFTPも立ち上げないといけません。まず、これらの作業をストレスなく行えるほどの敏捷性をSL-C700が備えていないのです。

 また、ニュースを更新する段階では、十数というサイト、何十という記事タイトルを読まないといけないですし、そのうちの何十%かは記事の中身も読む作業が伴います。それは実際の更新作業とトータルすると、1時間やそこらで終わる作業じゃないのです。なにしろ、通信速度がそんなに速くないわけですから。残念ながら、それに堪えるだけのスタミナもSL-C700は備えてくれていないのです。

 したがって、現在はニュースをピックアップする段階でのブラウズ専用機としての役目を果たしてもらってます。ノートPCのバッテリだけでも不安を感じることがよくありましたから、そのバックアップとしての意味もあります。それだけの用途であれば、なんとかスタミナもギリギリ持ちますから。場所を選ばずに広げることができるってのもポイントのひとつですね。立ったままでも使えますし。

 ということで現状では、所詮はPDAとしての使いかたの域を出ていないってことになっちゃいます。私としてはそれで満足してる部分もあるのですが、でも、まだ野心を捨てたわけではないのです。残された期待は次世代機に向けられていく、というだけのことなのですから。


■ 参考リンク
 Zaurusホームページ

 製品紹介ページ

 ニュースリリース

 画面サイズ体験

 Linuxザウルス/自動で時計合わせ

 PC Watch 塩田紳二のPDAレポート「Linuxザウルス「SL-C700」詳細レビュー」

 ケータイ Watch モバイラーズEYE「SL-C700を巡る冒険」

 ケータイ Watch スタパトロニクス「液晶とLCフォントに洗脳されました 「シャープ SL-C700」」